06/25 12:52

歯のない笑顔

駅に向かって歩いていたら、ホームレス風の男性に話しかけられた。
捲し立てるような英語で、必死に何かを伝えてくる。

よく見ると、彼の手にはブラックサンダーやチロルチョコ。
どうやら、駄菓子を外国人旅行者に売り歩いているらしい。

私は彼の顔を見つめた。
歯は数本しかなく、空のドリンクホルダーに菓子がいくつか、ぽつんと。

きっと、必死に覚えた英語だったのだろう。
その努力と生活の気配に、なぜか胸がざわついた。

わたしは少しばかりの寸志を渡し、溶けかけたブラックサンダーを一つ受け取った。

「ありがとう。今日はこれで上がりだよ」
歯のない笑顔が、少し眩しく見えた。

ぐにゃりと形の崩れたチョコを握りしめながら、
みんな、必死に生きているなあと思いました。


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本日もよろしくお願いいたします♥️

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